口腔外科

舌が痛む : 舌痛症

舌が痛む : 舌痛症

舌がやけどをしたようなヒリヒリ・ピリピリした痛みが何ヶ月も続く「舌痛症」という疾患があります。
検査では特に異常が認められず、現在のところはっきりとした原因は特定できていません。
患者の8割以上が女性で、特に40~50歳代に多く発症するとされているので更年期との関連性も疑われていますが

・舌の痛みは心理・社会的なストレスと密接な関係があるということ
・ホルモンバランスの乱れ等の内分泌機能異常との関係
・痛みの伝達や知覚にかかわる神経回路の障害

なども一因とも考えられるようになってきました。

症状には波があり、起床直後や午前中は比較的落ち着いていますが、夕方や夜にひどく痛むことが多いようです。
この痛みは食事中や会話中などはあまり支障がなく、何かに熱中している間は痛みを忘れる場合もあります。
しかし、重症の場合は耐えがたい痛みになることもあります。
「舌がん」を心配される患者さんも多いのですが、舌痛症が原因でがんになることはなく、歯科心身症の代表的な疾患です。

約40年前から、この舌の痛みには抗うつ剤が効くことがわかっています。
現在は眠気や口の乾きなどの副作用が少ない薬も出ており、舌痛症に対する有効率は約70%です。
また、1つの薬が効かなくても他の薬が有効な場合もあります。
薬の効果には個人差があり、すぐには効果が得られない場合もあります。
あくまでも対処療法ですが、痛みを低減させてQOL(生活の質)を上げるという意味ではとても有効です。

「抗うつ剤」「歯科心身症」というワードで治療に否定的な患者さんもいらっしゃいますが、
精神的な病気ではなく、口腔の感覚神経が混乱している状態、つまり痛まなくてもいいときに痛みの神経回路が勝手に
痛みの信号を発している状態ではないかと考えられ、この余計な信号を制御するために抗うつ剤が必要なのです。
この症状は睡眠不足や過労などで悪化しやすいので、規則正しい生活を心がけることも大切です。

診断にはまず、
・貧血に伴う舌炎による舌痛
・糖尿病、服薬などによって二次的に生じる舌痛
・歯列不正や咬耗などによる物理的な要因
・口腔内の感染(カンジダ症など)による舌痛
など、原因の判明している舌痛と区別する必要があります。
上記について精査し問題があるものは治療した上で、なおかつ舌痛が改善されない場合「舌痛症」と診断されます。
舌痛症に関して心当たりがある、心配という方はどうぞ早めに来院ください。

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